実際にOracle REST Data ServicesのRESTサービスとして、簡単なリモートMCPサーバーを実装してみました。以下の記事でツール呼び出し向けに実装しているget_schemaとrun_sqlを、リモートMCPサーバーのtools/listで一覧し、tools/callで呼び出せるようにします。
ツールとして使用するget_schemaとrun_sqlの実装や設定をワークスペースに作成するため、以下のAPEXアプリケーションをインポートします。表OPENAI_TOOLSとファンクションget_schema、run_sqlが作成され、属性などの定義情報が表に挿入されます。
https://github.com/ujnak/apexapps/blob/master/exports/chat-with-generative-ai-hc-242.zip
現時点でリモートMCPサーバーを直接呼ぶには、ClaudeのMaxプランに入るか、mcp-remoteを中間に入れる方法しか見つけられませんでした。mcp-remoteではなぜか上手く通信できず、また、ClaudeのMaxプランは高価です。
そういった理由で、とりあえず、MCP Inspectorで動作確認を行なっています。以下のGIF動画ように呼び出しています。
MCP Inspectorを起動します。
% npx @modelcontextprotocol/inspector
Starting MCP inspector...
⚙️ Proxy server listening on port 6277
🔍 MCP Inspector is up and running at http://127.0.0.1:6274 🚀
MCP Inspector is up and running at ... に続いて表示されているURLに、ブラウザより接続します。
Transport TypeにStreamable HTTPを選択し、URLにORDSのRESTサービスのURLを入力します。ORDSのRESTサービスをOAuth2で保護している場合、Header NameにAuthorization、Bearer TokenにORDSのトークンURLを呼び出して得られたトークンを設定します。
Connectをクリックすると、methodがinitializeのリクエストが送信されます。そのレスポンスを受けて、接続が確立します。レスポンスに含まれるcapabilitiesはtoolsだけです。
Toolsタブを開き、List Toolsをクリックします。
methodがtools/listのリクエストが送信され、そのレスポンスとしてget_schemaとrun_sqlが呼び出し可能なツールとして返されます。
ツールからget_schemaを選択して、Run Toolをクリックします。methodがtools/callのリクエストが送信され、そのレスポンスとしてget_shemaの出力が返されます。
同様にツールからrun_sqlを選択します。パラメータのsqlに以下を入力し、Run Toolをクリックします。
select * from eba_countries_v
run_sqlが呼び出され、上記のSELECT文の出力が返されます。
Disconnectをクリックします。以上で最初の状態に戻ります。
MCPサーバーはAlways FreeのAutonomous Databaseに実装しています。MCP Inspectorで確認する範囲であれば、パブリックIPやDNSに登録されたホスト名、HTTPSといった条件は不要かと思います。
主にJSONRPCを扱うパッケージとしてMCP_HTTP_SERVER_PKGを作成しています。プロシージャORDS_HANDLERを、ORDSのRESTサービスから呼び出します。
MCPサーバーとして必要なinitialize、tools/list、tools/callの処理は、パッケージMCP_SAMPLEに実装しています。
これらのパッケージやパッケージを登録する表MCP_HTTP_SERVERSの作成を、サポート・スクリプトとして含んだAPEXアプリケーションMCP Handlerのエクスポートを以下の置きました。
https://github.com/ujnak/apexapps/blob/master/exports/mcp_handler.zip
このアプリケーションをインストールして実行すると、以下のような画面が開きます。初期状態では、レポートは空です。
ORDS URIにORDSのRESTサービスのURIを設定します。/ords/ORDS別名/モジュール名になります。リモートMCPサーバーのエンドポイントの末尾は/mcpになるので、テンプレート名は必ずmcpになります。ORDS URIからはmcpの部分は除きます。
methodのinitizliazeを受け付けたときに開始するセッションとして、APEXのセッションを流用しています。そのため、APEX_SESSION.CREATE_SESSIONに与えるアプリケーションIDとページIDを、Apex App ID、Apex Page IDに設定します。これはデフォルトで、このアプリ自体のアプリケーションIDとページIDを割り当てているので変更は不要です。
Package NameにリモートMCPサーバーの処理を実装しているパッケージ名を設定します。methodがinitializeであれば、このパッケージに含まれるプロシージャINITIALIZEが呼び出されます。methodがtools/listであれば、/を_に置き換えたプロシージャTOOLS_LISTを呼び出します。tools/callはプロシージャTOOLS_CALLが呼び出されます。MCPサーバーにpromptsやresourcesは実装していませんが、initializeのレスポンスのcapabilitiesに含めて、パッケージにpromptsやresourcesをプロシージャとして実装することで、フレームワークを変更することなく機能を追加できます。
Log LevelはAPEX_DEBUG.ENABLEに与える数値です。しかし、何故かAPEX_DEBUG.INFOの出力をビューAPEX_DEBUG_MESSAGESから確認できていません。
Tool Setの指定は、Chat with Generative AIのアプリケーションのToolsに登録した、Tool Setを指定します。今回のテストでは、ファンクションget_schemaとrun_sqlをまとめたCountriesを選択しています。
続いて、ORDSのRESTサービスの設定を行います。こちらについてはインストール・スクリプトを先ほどのmcp_handler.zipに含めているので、APEXアプリケーションを実行するとRESTサービスも作成されます。
RESTサービスとしてsampleserverが作成されますが、作成した時点でOAuth2で保護されています。そのため、RESTサービスにアクセスするためのOAuthクライアントを作成します。
以下のスクリプトを実行し、クライアントとしてmcp_clientを作成し、ロールMCP Server Roleを割り当てます。
Bearerトークンを取得するために、作成したOAuthクライアントmcp_clientのclient_idとclient_secretを検索します。
以下のSELECT文を実行します。
select name, client_id, client_secret from user_ords_clients where name = 'mcp_client'
取り出したclient_idおよびclient_secretを使って、ORDSのトークンURLを呼び出します。ORDSのトークンURLは、ORDS別名以降に/oauth/tokenを加えたものになります。
curl -X POST https://[ホスト名]/ords/[ORDS別名]/oauth/token \
-H "Content-Type: application/x-www-form-urlencoded" \
-u "[client_id]:[client_secret]" \
-d "grant_type=client_credentials"
% curl -X POST https://***********-apexdev.adb.us-ashburn-1.oraclecloudapps.com/ords/apexdev/oauth/token \
-H "Content-Type: application/x-www-form-urlencoded" \
-u "rJc************Qjg..:-FnhL***********eg.." \
-d "grant_type=client_credentials"
{"access_token":"KhDE2WU*********38oOg","token_type":"bearer","expires_in":3600}
%
ベーシック認証の情報としてclient_idとclient_secretを与えてトークンURLを呼び出すと、access_tokenが返されます。access_tokenの値をコピーし、MCP InspectorのBearer Tokenに設定します。
リモートMCPサーバーの保護についてきちんと調べ切れていないのですが、この方法による保護はユーザーが固定になり、アプリケーションの利用者に紐づきません。おそらく、こちらの記事「ORDS 23.3で追加されたOAUTH.CREATE_JWT_PROFILEを使ってRESTサービスを保護する」で使用しているOAUTH.CREATE_JWT_PROFILEによる保護が必要なのではないかと思われます。
実際にはClaude DesktopやClaude.aiに統合した上でテストを行う必要はありますが、何とかなりそうな印象はあります。ただし、アプリケーションを利用しているユーザーに認証を紐づけるのは、難度が高そうだとは思います。
今回の記事は以上になります。
Oracle APEXのアプリケーション作成の参考になれば幸いです。
完