2024年5月14日火曜日

DBMS_VECTOR_CHAINのUTL_TO_TEXTとUTL_TO_CHUNKSの出力を確認する

Always FreeのAutonomous DatabaseとしてOracle Database 23aiを選択できるようになりました。23aiより新しく追加されたパッケージDBMS_VECTOR_CHAINに含まれるUTL_TO_TEXTとUTL_TO_CHUNKSの出力を確認するため、簡単なAPEXアプリケーションを作成してみました。

テキストの取り出しとチャンク分割を行うファイルをアプリケーションにアップロードし、DBMS_VECTOR_CHAINのUTL_TO_TEXTおよびUTL_TO_CHUNKSを呼び出します。UTL_TO_TEXTについては指定可能なパラメータが少ないため、plaintextおよびcharsetをそれぞれ指定できるようにしています。UTL_TO_CHUNKSは色々なパラメータを指定できるため、パラメータをJSONのまま与えるようにしています。

指定できるパラメータについては23aiのSQL Language Referenceの、VECTOR_CHUNKSで説明されています。


作成したアプリケーションのエクスポートを以下に置きました。
https://github.com/ujnak/apexapps/blob/master/exports/sample-dbms-vector-chain.zip

以下にアプリケーションの実装のポイントを紹介します。

テキストの取り出しおよびチャンク分割の対象とするファイルを選択するページ・アイテムはP1_FILEとして作成しています。ページ・アイテムのタイプファイルのアップロードです。

ストレージタイプ表APEX_APPLICATION_TEMP_FILESを選択し、ファイルをパージするタイミングリクエストの終わりとしています。アップロードしたファイルからテキストが取り出し、ページ・アイテムP1_TEXTに保存します。その後はアップロードしたファイルを参照することはないため、リクエストが終了した時点でファイルはパージします。


UTL_TO_TEXTのパラメータのひとつであるplaintextを設定するページ・アイテムをP1_PLAINTEXTとして作成しています。指定可能な値はtrueまたはfalseなので、ページ・アイテムのタイプ切替えを選択しています。

設定デフォルトの使用オフにし、オン値trueオフ値falseとしています。デフォルトtrueです。


UTL_TO_TEXTに与えることができるもうひとつのパラメータであるcharsetは、ページ・アイテムP1_CHARSETで指定します。ただし、このパラメータはUTF8以外受け取らないため、タイプテキスト・フィールドデフォルトUTF8としています。


UTL_TO_TEXTを呼び出した結果を保持するページ・アイテムをP1_TEXTとして作成しています。結果はCLOBであるため、セッション・ステートデータ型としてCLOBを選択します。また、ストレージセッションごと(永続)を選択し、この後の処理から参照できるようにします。


UTL_TO_TEXTを呼び出すボタンTO_TEXTを作成しています。動作アクションページの送信です。


ボタンTO_TEXTを押したときに実行されるプロセスをUTL_TO_TEXTとして作成しています。

実行するコードは以下です。DBMS_VECTOR_CHAIN.UTL_TO_TEXTを呼び出しています。ドキュメントのExampleでは、"plaintext": "true" との指定が記述されていますが、このコードでは"plaintext": true (文字列ではなくboolean)としています。



UTL_TO_CHUNKSの呼び出しの際に与えるパラメータを指定するページ・アイテムをP1_PARAMSとして作成しています。ページ・アイテムのタイプテキスト領域とし、JSONを記述するようにしています。


UTL_TO_CHUNKSを呼び出し分割されたチャンクは、対話モード・レポートで表示します。チャンク自体はAPEXコレクションに保存します。

リージョンのソースとして以下のSQLを記述します。
select
    n001 chunk_id, n002 chunk_offset, n003 chunk_length
    ,clob001 chunk_data
from apex_collections where collection_name = 'CHUNKS' 


UTL_TO_CHUNKSを呼び出すボタンTO_CHUNKSを作成しています。動作アクションページの送信です。


ボタンTO_CHUNKSを押したときに実行されるプロセスをUTL_TO_CHUNKSとして作成しています。

実行するコードは以下です。DBMS_VECTOR_CHAIN.UTL_TO_CHUNKSを呼び出しています。ドキュメントのExampleでは、"max": "100", "overlap":"0" との指定が記述されていますが、本来は"max": 100, "overlap": 0(文字列ではなく数値)ではないかと思います。



アプリケーションの実装の紹介は以上です。

PowerPointやPDFのファイルを対象にテキスト取り出しとチャンク分割を行なってみましたが、設定によっては「ORA-20000: Oracle Textエラー: DRG-50857: oracle error in dbms_vector_chain.utl_to_chunks ORA-06502: PL/SQL: 値または変換エラー: Bulk Bind: Truncated Bindが発生しました」というエラーが発生しました。


これは分割されたチャンクのバイト数が4000を超えるときに発生するように見えます。byにcharactersを指定した際のmaxの上限は4000、wordsの場合は1000ですが、文字コードがUTF8であるためバイト数としては4000を超えることはあります。

VECTOR_CHUNKSでは、データベースの初期化パラメータのmax_string_sizeがextendedの場合は、チャンクのバイト長が32767に拡張されるとの説明があります。これはVECTOR_CHUNKSの場合に限定されていてDBMS_VECTOR_CHAIN.UTL_TO_CHUNKSには適用されないようです。UTL_TO_CHUNKSの戻り値のタイプであるVECTOR_ARRAY_Tの要素のJSONとして"chunk_data":"VARCHAR2(4000)"と記載されていて、max_string_sizeがextendedでも32767に拡張されないようです。

DBMS_VECTOR_CHAIN.UTL_TO_CHUNKSをVECTOR_CHUNKSに書き直すと、以下のようなコードになります。chunk_specは文字列として指定する必要があります。


VECTOR_CHUNKSの呼び出しではチャンクの長さが4000バイトを超えても「ORA-06502: PL/SQL: 値または変換エラー: Bulk Bind: Truncated Bindが発生しました」のエラーは発生しません。

今回の記事は以上になります。

Oracle APEXのアプリケーション作成の参考になれば幸いです。