JSON配列を扱えるようになったことにより、JSONドキュメントに含まれている階層構造の情報(親子関係のある情報)を扱うことができます。
Oracle APEX 24.1のRESTデータ・ソースの拡張については、Oracle APEXのアーキテクトのCarsten CzarskiさんがOracleの公式ブログの記事で解説されています。
APEX 24.1: REST Data Sources and nested JSON responsesh
APEXアプリケーションを作成し、ブログ記事に沿って新しく追加された機能を確認していきます。
元の記事では階層を含むJSONドキュメントを返すREST APIについて、すでに作成済みのURLを紹介しています。本記事ではRESTサービスから作成します。
最初にOracle Databaseのサンプル・スキーマのOrder Entryに含まれているJSONデータを、データベースに取り込みます。以前にJSONのサンプル・データをデータベースに取り込む手順は紹介していますが、もう少し簡略化した手順でデータベースに取り込んでみます。
PurchaseOrders.dmpを取り込む表としてEBAJ_PURCHASE_ORDERSを作成します。今回はデータベースとして23aiを使用しているため、JSONコレクション表として作成します。
create json collection table ebaj_purchase_orders;
表を作成したのち以下のスクリプトを実行し、GitHubにあるPurchaseOrders.dmpを表EBAJ_PURCHASE_ORDERSに取り込みます。
9999行のPurchase Orderのドキュメント(いわゆる発注書)が読み込まれます。
データの準備ができたので、この表を元にRESTサービスを作成します。
SQLワークショップのRESTfulサービスを開き、有効なオブジェクトを選択します。
AutoRESTが有効化されたオブジェクトが一覧されます。AutoRESTオブジェクトの作成をクリックします。
RESTデータ・ソースを作成する際に、ここで表示されている完全なURLを指定します。この値をコピーして保存しておきます。
作成をクリックします。
表EBAJ_PURCHASE_ORDERSをREST APIを通して参照できるようになりました。
ブラウザに完全なURLを入力し、データを確認してみます。
Purchase Orderのドキュメントには、以下の階層構造があることがわかります。
- itemsとして複数のPurchase Orderのドキュメントが含まれる。
- POドキュメントには複数のShippingInstructionが含まれる。
- ShippingInstructionには複数のPhoneが含まれる。
- POドキュメントには複数のLine Item(いわゆる品目)が含まれる。
このRESTサービスを元にRESTデータ・ソースを作成します。
その前にいくつか注意点を記録しておきます。
Oracle APEX 24.1.1のRESTfulサービスの画面よりAutoREST定義を削除しようとすると、ORA-2290のエラーが発生しました。
代替となる削除方法は2通りあります。ひとつ目の方法は、プロシージャORDS.ENABLE_OBJECTを引数p_enabledにfalseを渡して呼び出し、オブジェクトに対して適用したAutoRESTを無効化します。
begin
ords.enable_object(
p_enabled => false
,p_object => 'EBAJ_PURCHASE_ORDERS'
);
end;
もう一つの方法は、データベース・アクションのRESTよりAutoRESTを開き、オブジェクトの無効化を実行します。
その場合は、モジュールとテンプレートを作成し、GETハンドラに以下のSELECT文を記述します。JSON型に変換できる場合は、JSONファンクションを使用します。
select json(data) data from ebaj_purchase_orders
JSON型が使えない場合はエスケープを抑止する列に別名を付け、その先頭に"{}"を付加します。
select data "{}data" from ebaj_purchase_orders -- CLOBの場合
select to_clob(data) "{}data" from ebaj_purchase_orders -- BLOBの場合
RESTサービスが作成できました。
これからAPEXアプリケーションを作成し、本題のRESTデータ・ソースを作成してJSON配列の扱いを確認します。
アプリケーションの作成を呼び出し、空のAPEXアプリケーションを作成します。名前はPurchase Ordersとします。
アプリケーションの作成をクリックします。
アプリケーションが作成されたら、共有コンポーネントを開きます。
RESTデータ・ソースを開きます。
作成済みのRESTデータ・ソースが一覧されます。作成をクリックし、Purchase OrdersのREST APIを呼び出すRESTデータ・ソースを作成します。
RESTデータ・ソースの作成は最初から行います。
次へ進みます。
RESTデータ・ソース・タイプとして簡易HTTPを選択します。名前はPurchase Ordersとします。URLエンドポイントとして、作成したREST APIの完全なURLを入力します。
次へ進みます。
新規作成またはすでに作成済みのリモート・サーバーの設定を確認します。
次へ進みます。
ページ区切りタイプとしてページ区切りなしを選択します。
次へ進みます。
認証が必要ですはオフです。
検出をクリックします。
REST APIを呼び出し取得したJSONドキュメントを解析し、属性の名前やデータからデータ型を推定します。
データ・プロファイルを開き、推定されたデータ型を確認します。
行セレクタとしてitemsが認識されています。つまり、それぞれのPOドキュメントは属性itemsに配列として含まれています。
認識されたデータ・プロファイルには、いくつかデータ型がARRAYの行が含まれます。セレクタdata.LineItemsやdata.ShippingInstructions.Phoneです。
RESTデータ・ソースの作成を実行します。
RESTデータ・ソースPurchase Ordersが作成されます。作成された内容を確認するため、Purchase Ordersを開きます。
データ・プロファイルの編集を開きます。
データ・プロファイルDATA_LINEITEMS(セレクタ:data.LineItems)のデータ型が配列であり、それを親列としたデータ・プロファイルとしてPART_UPCCODE、PART_UNITPRICE、PART_DESCIPTION、QUANTITY、ITEMNUMBERが作成されています。
この他にデータ・プロファイルDATA_SHIPPINGINSTRUCTIONS_PHONE(セレクタ:data.ShippingInstructions.Phone)のデータ型が配列であり、それを親列としたデータ・プロファイルとしてTYPEとNUMBER_が作成されています。
この他にデータ・プロファイルLINKSのデータ型が配列として認識されています。データ・プロファイルのLINKS、REL、HREFはORDSが自動的に付与する属性であるため、共通をNoに変更し、ページ作成ウィザードによるレポート作成時に列として含まれないようにします。
この共通はOracle APEX 24.1で、データ・プロファイルに追加された属性です。
変更の適用をクリックします。
以上でRESTデータ・ソースの作成は完了です。
作成したRESTデータ・ソースPurchase Ordersをソースとした、APEXのレポートを作成します。
ページ・デザイナでホーム・ページを開き、新たにリージョンを作成します。
識別の名前はPurchase Orders、タイプは対話モード・レポートとします。ソースの位置にRESTソースを選択し、RESTソースとしてPurchase Ordersを設定します。
ソースとしてRESTソースを選択すると、リージョンの属性としてデータ・プロファイルと配列列が現れます。
以下では列LINKSは不要なので、コメント・アウトしています。
対話モード・レポートは以下のように表示されます。列DATA_LINEITEMSおよびDATA_SHIPPINGINSTRUCTIONS_PHONEともに、JSONがそのまま表示されます。
同様に対話モード・レポートを作成し、データ・プロファイルの配列列としてDATA_LINEITEMSを指定します。レポートに選択できる配列列は1つのみです。
配列列を設定すると、それを親列としたデータ・プロファイルが列として追加されます。今回の例ではPART_UPCCODE、PART_UNITPRICE、PART_DESCRIPTION、QUANTITY、ITEMNUMBERが列として追加されています。
データプロファイルのデータ型が配列となっている列はすべて列から取り除かれます。今回の例では、DATA_LINEITEMS、DATA_SHIPPINGINSTRUCTIONS_PHONE、LINKSです。
対話モード・レポートは以下のように表示されます。PONumberは一意の数値ですが、LineItemsは複数あるため、レポートには同じPONumberが複数現れます。
ローカル後処理のタイプにSQL問合せを選択し、SQL問合せに以下を記述します。
select
DATA_USER,
DATA_PONUMBER,
DATA_REFERENCE,
DATA_COSTCENTER,
SUM(PART_UNITPRICE * QUANTITY) as ORDER_TOTAL
from #APEX$SOURCE_DATA#
group by
DATA_USER,
DATA_PONUMBER,
DATA_REFERENCE,
DATA_COSTCENTER
対話モード・レポートは以下のように表示されます。Order TotalにPuchase Orderごとの合計金額が表示されます。
新たに追加された列Order Totalは最初、非表示になっている場合があります。そのときはアクション・メニューの列を開いて、表示列に追加します。
対話グリッドもRESTデータ・ソースの配列列を扱うことができます。対話グリッド以外でも、RESTデータ・ソースが扱えるコンポーネントは概ね配列列を指定できます。
対話グリッドでは、複数の対話グリッドを使ってマスター・ディテール関係を設定できます。
最初にPurchase Orderを保持する対話グリッドを作成します。データ・プロファイルの配列列は、設定しません。
列DATA_PONUMBERを選択し、検証の必須の値をオン、ソースの主キーをオンにします。
Line Itemを表示する対話グリッドを作成します。すでに作成済みの対話グリッドPurchase Ordersをコピーし、識別の名前をLine Itemsに変更します。
列DATA_PONUMBERを選択し、マスター・ディテールのマスター列としてDATA_PONUMBERを選択します。
あとは、対話グリッドPurchase Ordersに表示されている列をコメント・アウトします。
対話グリッドを表示すると以下のように表示されます。
Oracle APEXが提供しているAPIのAPEX_EXEC.OPEN_REST_SOURCE_QUERYも、配列列に当たる引数p_array_column_nameをサポートしています。
本記事で参照しているCarsten Czarskiさんのプログに載っているコードと処理内容は同じですが、APEXアプリケーション内で動作するように改変しました。
ページのレンダリング前にプロセスを作成し、以下のコードを実行します。ページ・アイテムP5_OUTPUTに結果を出力します。
出力先となるページ・アイテムP5_OUTPUTの識別のタイプはテキスト領域とします。
外観の高さに40を設定し、高さを広げておきます。また表示が崩れないように詳細のカスタム属性で等幅フォントを使用するように設定します。
style="font-family: monospace;"
続いて引数p_array_column_nameは指定せず、APEX_EXEC.OPEN_ARRAYとAPEX_EXEC.NEXT_ARRAY_ROWを呼び出し、JSONの階層構造を辿ります。
レンダリング前のプロセスで以下のコードを実行します。